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感覚は育つもの・育てるもの

 2022年年末、新しい講座を立ち上げました。テーマは「セラピストの感覚を育てる」です。ずっと単発講座として形にしたく、長年温めていました。というのも、セラピスト育成の技術指導する上で、技術の形を伝える以上に、感覚って伝えるのが難しい…と感じたことがきっかけでした。

 

レッスンで触れ方が伝えられない…

 技術指導では、ひとつひとつの技法以前に、とても大切にしていることがあります。それは「クライアントを大切にすること」です。こんなこと、当たり前じゃないか、と思われるかもしれませんが、これが結構難しいんです。

 

レッスン中、「もっと丁寧に触れてください」「施術中はできるだけ手を離さないようにしましょう」「シーツをグイグイ引っ張らないでくださいね」と、技術指導の合間に何度もお伝えします。生徒様は技術練習に一生懸命なので、そこまで気が回らないということもあるかな…と思いつつも、練習の時点で意識付けしていくことが大切なので、妥協はできませんでした。

 

 多くのセラピストがお客様に「ゆっくりと休んでほしい」、「心身を癒していただきたい」と、労わりの気持ちを胸に施術をしています。つまり手から想いを伝えるお仕事なのです。悪気は無くても、ついつい、乱暴に触れてしまった、ぎゅっと押してしまったら、板割りの気持ちどころか、逆に乱暴にされたと不安や怒りを感じさせてしまうかもしれません。

 

しかし、なかなか伝わらない時もあり、「改善しないのはなぜだろう…、伝え方に問題があるのかもしれない」と、自身の指導方法にも疑問を持つようになりました。

 

 

それってつもりだったかも

 ふと思ったのが、「私の触れ方が、丁寧に触れるというイメージに繋がってないのでは?」ということでした。レッスンでは、その日学ぶ技術を必ず生徒さんにデモンストレーション、つまり体感してもらってから練習します。表現者であるセラピストは、自分の身体、感覚で経験してこそ、その技術を共感性のあるセラピーとして表現できると思っています。


私自身、丁寧にデモンストレーションしていた「つもり」ですが、骨筋のラインを正確に辿らなきゃ、とか、感覚を正しく伝えなきゃ、とか、丁寧さや温かみにかけるものがあったのかもしれない…と、もう一度見直すことにしました。

 

日々のトレーニングで

 まずは自分の日常から見直しました。実は昔から旦那さんに「あなたは、力の加減を知らない」と言われてました。相手をペシっと軽く叩いたつもりでも、「痛すぎる!」と叱られることシバシバ…。それだけでなく、日常生活を振り返ってみると、歯磨きをすれば歯茎から血が出てたり(たぶん強く擦りすぎ)、掃除しながら色々なものにぶつかって倒したり、割ってしまったり(距離感が掴めない)…。

それこそ位置覚が鈍かったんですよね。

自身は、それでも丁寧に暮らしている「つもり」だったので、娘に「私って結構荒かったんだね…」と聞いたら「え、今頃知ったの?」との返事。知らぬは本人ばかりなりでした笑。

気持ちが焦ったり、落ち着かないと、この傾向が強く出てくるようなので、まずは入浴時に20分の瞑想して、心を落ち着かせるトレーニングをしました。さらに、コップやお皿を置いたり、片付ける時に音を鳴らさないようにするなど、何かに触れる時は、フワッと弧を描くような動きを意識し続けました。

特に、自分に触れる時に優しく、そっと触れるようもしましたね。前述の歯磨きもそうですが、洗髪の時や体を洗う時に、できるだけ優しく柔らかく、ゆっくりした動作に。すると、だんだん気持ちも穏やかになって、モノにぶつかる回数も減ってきた…と思います笑

そんなトレーニングの日々で、一番、変化を感じたことがありました。

 

動物は正直

 それはペットへの触れ方。飼っている猫たちに触れる際、突然、触らないように、まずはフワッと手や指を近づけます。その後、手のひら全体で、ゆっくりゆっくりと毛並みを流しながら触れるよう気をつけてみました。わたしの大切な家族です。優しく声がけしながら、温かい眼差しを向けて、丁寧にゆっくりと触れて、マインドフルを意識しました。

うちの猫たちは代々、保護猫なので、中には警戒心が強く、触られるのを嫌がる子もいました。ですが、触れ方を変えたら時には自分から頭を擦り付けてくるように!これは嬉しかったですね〜。触れ方で信頼関係が変わった、と思えた瞬間でした。

 

感覚は育つもの

 たびたび、このブログでもお伝えしていますが、私自身、感覚はもともと鈍いタイプ。その原因の一つには、幼少期の経験があると思います。年子の姉という立場だったせいか、あまり母に甘えていた記憶が無く、優しく触れられたという思い出があまりありません。母も若くして年子の姉妹、そして今でいうワンオペ状態で、必死だったのでしょう。

 

 セラピストになるためのプロ研修では、自分の感覚がよくわからず、しょっちゅう腱鞘炎になったりしてました。つまり体からのメッセージを無視した無理な手力だったのでしょう。今思うと、その頃のお客様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

自身の幼少期の体験のせいにするわけではありませんが、触れるという感性や感覚は経験していないと、同じように表現するのは難しいと心理学でもいわれています。しかし、大人になってからでも、意識や訓練によって育てることができる、とも、改めて自身を振り返って思いました。

人は年を重ねると、老いとともに視覚や聴覚が衰えていきます。しかし、触覚は逆に高まっていくこともあります。熟練の職人さんが良い例ですね。寿司職人さんが、測ることなくシャリの重さが常に同じだったり、年齢を重ねるほどに素晴らしい職人技を持っている方はたくさんいます。

今回、新しい講座を立ち上げた理由として、いつまでも技術に自信が持てなかったり、いつもお客様の反応が気になってしまうセラピストさんのお役に立てるかも、という想いでした。

 

この「自信が持てない」理由は、自分の感覚の実感が薄いこともあるかもしれません。ですが、自分の感覚って人と比べることができないですし、分かりづらい部分かもしれません。だから体験するしかないのです。

 

タオルワークで、そっとタオルを掛けられる感覚、引っ張られる感覚だったり、ゆっくりのストロークと少し早めのストロークの感じ方、指を広げた触れ方と、指を閉じた触れ方、スタンス理論も使って手力のある触れ方と、体重で預ける触れ方の違い、体の芯まで響く圧の掛け方など、時間内、目一杯体感レッスンしていただく予定です。

体が学んだことは、「お客様に、もっとこうしたい」という想いになったり、「今までのやり方で大丈夫だった」という自信につながるかもしれません。さまざまな感覚の違いを知ることで、自分の世界が広がり、技術向上にもつながり、セラピーの楽しさ倍増間違いなしです!

 

まだまだ進化中

とはいえ、私もまだまだ進化の途中。年々、感覚が変わっていくのを感じています。それに応じて技術もマイナーチェンジしていくので、生徒様からは「また技術が変わりましたね」と言われます(苦笑)。ですが、私が探究したいのは技術の形ではなく、気持ち良さはもちろん、自己肯定感につながる肌感覚をお客様と共有することです。

 

肌感覚を通して、豊かさを感じる日々をお伝えできる熟練セラピストになれるよう、毎日が訓練です。

定期開催中

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